大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 平成3年(ワ)1624号 判決

原告

ゴビンドラム・ナラインダス・サドワニ

(以下「原告甲」という。)

原告

ビヌー・ゴビンドラム・サドワニ

(以下「原告乙」という。)

右原告ら訴訟代理人弁護士

松尾翼

西山宏

内藤正明

志賀剛一

森島庸介

田倉保

被告

キシンチャンド・ナラインダス・サドワニ

(以下「被告甲」という。)

サドワニス・ジャパン有限会社

(以下「被告乙」という。)

右代表者代表取締役

キシンチャンド・ナラインダス・サドワニ

右被告ら訴訟代理人弁護士

山本忠雄

主文

一  右当事者ら間の香港高等法院一九八二年第四九三九号訴訟事件(同法院ナザレス判事が一九八八年四月二七日に判決言渡)について、「被告らは、原告らに対し、同訴訟事件において、原告らが負担した訴訟費用120万2585.58香港ドルを支払え。」との金銭給付義務を宣言した同法院ナザレス判事の一九八八年八月三一日付命令及び同法院(訴訟費用算定主事オードネル)の一九八九年一〇月三日付費用査定書並びに同法院(同主事)の同年九月一二日付費用証明書及び右金員に対する一九八八年九月一日から支払済みに至るまで別紙利息計算表記載の利率による遅延損害金支払義務につき原告らが被告らに対して強制執行することを許可する。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  この判決の第一項は、原告らにおいて、共同して金三〇〇万円の担保を供するときは、仮に執行することができる。

事件

第一 申立

一 原告ら

1 主文一、二項と同旨

2 仮執行宣言

二 被告ら

1 原告らの請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二 主張

一 原告ら(請求原因)

1 当事者

(一) 原告らは、インド国籍を有し、本訴提起当時、肩書地に住所を有する者である。

(二) 被告甲は、インド国籍を有し、肩書地に住所を有する者である。

(三) 被告乙は、日本法に基づいて設立され、肩書地に本店を有する有限会社である。

(四) 原告らは夫婦であり、原告甲と被告甲は兄弟である。

(五) 被告甲と訴外ラディカ・キシンチャンド・サドワニ(以下「訴外ラディカ」という。)は、夫婦であり、両名共被告乙の取締役である。

2 本件香港訴訟に至る経緯

(一) 原告ら、被告甲及び訴外ラディカは、一九七八年六月五日、訴外バンク・オブ・インディア(以下「訴外銀行」という。)との間で、訴外銀行の被告乙に対する融資につき、二億三〇〇〇万円の限度で保証する旨の契約(以下「本件保証契約」という。)を締結した。

(二) ところが、被告甲がスリランカにあるサドワニ家の同族会社エスカイヤ・ガーメンツ・インダストリー・リミッティッドの管理権を長兄のラキマル・サドワニから取り上げようとし、他の兄弟との間で争いとなったため、被告甲は、サドワニ家の兄弟が経営する会社の債務の保証はその国に存在する兄弟が行うべきであるとして、訴外ラディカともに、一九八一年四月八日、訴外銀行との間で、訴外銀行の被告乙に対する融資につき、新たに三億三〇〇〇万円を限度とする保証契約を締結し、同時に原告らと訴外銀行との間の本件保証契約は解除された。

(三) その後、訴外銀行が割引いた被告乙の振出した為替手形八通が不渡りとなったので、訴外銀行は、被告乙に対し、右手形金(以下「本件手形金」という。)の請求をした。

(四) ところが被告らは、訴外銀行と協議の上、一九八二年五月一二日、次のような内容の合意(以下「本件起訴契約」という。)を締結した。

(1) 訴外銀行は、原告らに対し、本件保証契約に基づき被告乙の本件手形金支払債務を主たる債務とする保証債務履行請求訴訟を提起する。

(2) 被告乙は、右(1)の訴訟及びその強制執行に必要な費用をすべて負担する。

(3) 訴外銀行は、右(1)の訴訟及びその執行が終了するまでは、被告ら及び訴外ラディカ(以下「被告ら三名」という。)に対する訴訟の提起を差し控える。

(五) 本件香港訴訟は、右(四)の本件起訴契約に基づき開始されたものである。

3 本件香港訴訟の経緯

(一) 訴外銀行は、本件起訴契約に基づき、一九八二年六月一〇日、原告らを相手方として、香港高等法院(以下「高等法院」という。)に、本件保証契約に基づく保証債務履行請求の本訴(一九八二年第四九三九号事件―以下「第一訴訟」という。)を提起した。

(二) 原告らは、一九八六年七月、訴外銀行、主債務者たる被告乙の保証人である被告甲及び訴外ラディカを相手方として、反訴(カウンタークレイム―以下「第二訴訟」という。)を提起した。

(三)(1) その後、高等法院モーティマー判事の一九八六年七月二日付命令に基づき、被告ら三名に対し、サード・パーティー・ノーティス(以下「T・P・N」という。)の手続が行われ、同月二六日、被告ら三名に右T・P・Nが送達された。

(2) 被告ら三名は、高等法院に対し、右T・P・Nを無効とするよう申立をしたが、同申立は、一九八七年一月二七日付命令で却下された。

(3) そこで、原告らから、被告ら三名を相手方とする第三当事者訴訟(サード・パーティー・プロシーディング―以下「第三訴訟」という。)が開始された。

(四) それに対し、被告ら三名は、一九八七年三月、原告らを相手方として、原告甲のみが保証債務を負担することの確認等請求の反訴(以下「第四訴訟」という。)を提起した。

(五) 右(一)ないし(四)の訴訟事件を「本件香港訴訟」と総称する。

(六) 本件香港訴訟における各請求の要旨は、次のとおりである。

(1) 第一訴訟(訴外銀行の原告らに対する請求)

本件保証契約に基づき被告乙の訴外銀行に対する本件手形金支払債務(元金54万2118.69USドル及び利息)を主たる債務とする保証債務の履行を求める。

(2) 第二訴訟(原告らの訴外銀行、被告甲及び訴外ラディカに対する反訴請求)

右(1)の請求が認容され、原告らが訴外銀行に対し、保証債務を履行したときには、原告らは、被告甲及び訴外ラディカが一九八二年五月二一日、訴外銀行のために設定した根抵当権につき、訴外銀行に代位する旨の確認を求める。

(3) 第三訴訟(原告らの被告ら三名に対する請求)

右(1)の請求が認容され、原告らが訴外銀行に対し、本件保証契約に基づく責任を負うものとされた場合には、原告らは、被告ら三名に対し、求償権を有する旨の確認を求める。

(4) 第四訴訟(被告ら三名の原告らに対する請求)

訴外銀行に対する支払責任は原告甲にあるとの確認を求める。

(七) 高等法院のナザレス判事は、一九八八年四月二七日、本件香港訴訟につき、次のとおり判決(以下「本件判決」という。)を言渡した。

(1) (第一訴訟)―訴外銀行の原告らに対する請求をいずれも棄却する。

(2) (第二訴訟)―原告らの訴外銀行に対する弁済による代位を求める反訴を棄却する。

(3) (第三訴訟)―原告らの被告ら三名に対する求償権の確認請求は、訴外銀行の原告らに対する請求が棄却されたので、請求がなかったものとみなす。

(4) (第四訴訟)―被告ら三名の原告らに対する反訴請求を棄却する。

4 本件外国裁判所判決の成立及び確定

(一) ナザレス判事は、本件判決中において、訴訟費用の負担につき、次のとおり裁判した。

(1) 主たる訴訟(第一、第二訴訟)の訴訟費用は、訴外銀行が原告らに対し、支払うべきであるとの仮命令。

(2) 原告らは、第三当事者訴訟(第三、第四訴訟)の訴訟費用を被告ら三名から回収する権利があるとの命令。

(二) 訴外銀行は、一九八八年五月九日、右(一)(1)の仮命令に対し、変更を求める申立てをし、同年八月三一日、ナザレス判事は、右申立てに対し、「審理の費用のうち、半日分の費用は認めない。」との変更命令を出した。

(三) 高等法院訴訟費用算定主事は、右(二)の命令及び訴外銀行が提出した訴訟費用計算書に基づき、一九八九年九月一二日、原告らが訴外銀行に支払うべき費用を21万3807.77香港ドルと査定した(以下この査定に対する証明書を「本件費用証明書」という。)。

右査定に対しては、一四日以内に原告らから再査定の申立てがなかったから、香港最高法院規則「命令第六二号」規則第三三号により、右査定は一九八九年九月二六日の経過により確定した。

(四) 他方、原告らは、一九八八年五月一一日、①被告ら三名は、第三当事者訴訟を含む本件香港訴訟において、原告らが負担する費用全額について賠償しなければならない。②訴外銀行は、第三当事者訴訟における原告らが負担する費用を支払わなければならない旨の命令を求める申立てをした。

右申立てに対し、ナザレス判事は、同年八月三一日、原告らの代理人、訴外銀行の代理人及び被告らの代理人(サムソン・シュウ法律事務所―以下「S事務所」という。)の聴問をした上で、「被告ら三名は、原告らに対し、審理の費用のうち、半日分を除き、第三当事者訴訟を含む本件香港訴訟において、原告らが負担する費用全額について賠償しなければならない。」との命令(以下「本件命令」という。)を出した。

(五) 香港最高法院規則「命令第五九号」規則四号によれば、判決及び命令に対する上訴(不服申立て)は、当該判決及び命令の日から六週間内にしなければならないところ、被告ら三名は、本件命令の日から六週間内に上訴しなかったから、本件命令は、一九八八年一〇月一二日の経過により確定した。

(六) そこで、高等法院訴訟費用算定主事は、一九八九年一〇月三日、本件命令及び原告らが提出した訴訟費用計算書に基づき、被告ら三名が原告らに対して支払うべき費用を98万8777.81香港ドル、訴外銀行が原告らに対して支払うべき費用を162万8915.08香港ドルと査定した(以下この査定書を「本件費用査定書」という。)。

右査定に対しては、一四日以内に被告ら三名から再査定の申立てがなかったから、香港最高法院規則「命令第六二号」規則第三三号により、右査定は一九八九年一〇月一七日の経過により確定した。

(七) 以上から、本件命令及びこれと一体をなす本件費用査定書と本件費用証明書が本件において執行判決を求める外国判決(以下「本件外国裁判所判決」という。)である。

5 本件命令等の意味及び被告らが原告らに対して支払うべき費用の範囲

本件命令は、前記4(四)の内容を有するが、この命令に基づいて、被告らが原告らに対して支払うべき費用は、本件命令と一体をなす本件費用査定書と本件費用証明書により査定された次の(一)、(二)の合計120万2585.58香港ドルである。

(一) 本件費用査定書により査定された98万8777.81香港ドル

(二) 本件費用証明書により査定された21万3807.77香港ドル

本件命令は、原告らが本件香港訴訟において自ら出捐した費用のみならず、原告らが訴外銀行に対し支払いを命ぜられた費用についても支払うべきことを定めたものである。

本件費用証明書で査定された21万3807.77香港ドルは、本件香港訴訟に付随する個々の申立に関する訴外銀行の費用を原告らの負担とするとの次の各命令に基づいて査定されたものである。

①ケムプスター判事の一九八三年一二月五日付命令、②マヨ判事の一九八四年六月二六日付命令、③オーデア判事の一九八六年一月二四日付命令、④リュウ判事の同年二月二四日付命令、⑤モーティマー判事の同年七月二日付命令、⑥クルーデン判事代理の一九八八年一月二八日付命令、⑦ナザレス判事の同年八月三一日付命令。

そして、原告らが訴外銀行に対して請求しうる原告らの費用について制限を加えた「審理の費用のうち半日分」は、右個々の申立に関する費用とは全く別のものである。

よって、本件費用証明書により査定された、原告らが訴外銀行に対して支払った(相殺により清算済み)21万3807.77香港ドルについても、被告らは、原告らに対し支払義務がある。

6 遅延利息

(一) 香港法上、金銭給付判決については、高等法院の個別の命令がない場合には、随時首席裁判官が命令によって定める利率による法定の遅延利息が当然に生ずるものとされている(香港最高法院令第四章第四九条)。

(二) ところが、本件判決については、高等法院の命令が存在しないから、結局、首席裁判官の命令によって定められる利率によるべきこととなる。

そして、イギリス貴族院の判例によれば、右利息は、個々の査定がなされた日ではなく、訴訟費用に関する命令が発せられた日から起算される。

(三) よって、被告らは、前記5の120万2585.58香港ドルに対する本件命令が発せられた日の翌日である一九八八年九月一日から支払ずみまでの遅延利息を支払う義務がある。

そこで、右遅延利息を算定すると、別紙利息計算表記載のとおりとなる。

(四) なお、本件命令主文には右遅延利息の支払を命ずる文言はないが、外国判決の承認は、当該外国判決が判決国の法律上有する効果をそのまま承認するものであり、主文の記載方法も多分に技術的な側面があるから、主文に記載がないとしても、香港法上当然に認められる遅延利息も承認の対象になるというべきである。

従って、被告らは、原告らに対し本件命令に従い、前記5の120万2585.58香港ドルに対する右遅延利息の支払義務を負う。

7 外国判決

(一) 民事訴訟法(以下「民訴法」という)二〇〇条、民事執行法二四条は、外国裁判所の「判決」と規定している。

しかし、裁判をいかなる名称で呼ぶかは国によって異なるから、実質的にみて私法上の権利の争訟に関する終局的判断であれば、その名称如何を問わず本条の「判決」に含まれると解すべきであり、本件命令も右「判決」に含まれ承認の対象となる。

(二) そして、本件外国裁判所判決(本件命令、本件費用査定書、本件費用証明書)は、前記4認定のとおり、それぞれ確定しているから、民訴法二〇〇条の「外国裁判所ノ確定判決」に該当する。

8 民訴法二〇〇条各号の要件具備

(一) 同条一号の要件(香港裁判所の管轄)

(1) 本件香港訴訟は、日本国の専属管轄に属さず、香港の裁判所に管轄が認められているから、「法令又ハ条約ニ於テ外国裁判所ノ裁判権ヲ否認」している場合にあたらない。

(2) すなわち、本件香港訴訟について、香港裁判所は、民訴法五条及び二一条に基づいて間接的一般管轄権を有していた。

(3)イ 第三訴訟の請求の要旨は、「第一訴訟による請求が認容され、原告らが訴外銀行に対し、本件保証契約に基づく責任を負うものとされた場合には、原告らは、被告ら三名に対し、求償権を有することの確認を求める。」というにある。

また、第二訴訟の請求の要旨は、「第一訴訟の請求が認容され、原告らが訴外銀行に対し、保証債務を履行したときには、原告らは、被告甲及び訴外ラディカが一九八二年五月二一日、訴外銀行のために設定した根抵当権に代位する旨の確認を求める。」というにある。

ロ 第三訴訟における原告らの請求は、保証人の求償権を根拠とし、訴外銀行と被告甲・訴外ラディカ及び原告らとの間の本件保証契約に基づくものである。

そして、右契約においては、求償債権の履行場所についての合意はなく、契約の準拠法についての定めも存しない。

しかし、右保証契約の準拠法は、この契約と最も密接かつ実質的に関係する日本の法律とするのが相当である。

従って、日本国民法四八四条に基づいて、被告ら(三名)の原告らに対する求償債務の義務履行地は、原告らの住所地である香港となる。

なお、確認訴訟についても義務履行地の特別裁判籍が認められる。

また仮に、右保証契約の準拠法が香港法であるとしても、香港法上金銭債務の履行場所は、債権者の住所地ないし営業所々在地であるから、結論に差異は生じない。

ハ 第二訴訟における請求については、義務の履行を伴わないため、義務履行地は観念し難い。

ところが、第二訴訟である右反訴は、第三当事者訴訟とともに主たる訴訟である第一訴訟と併合審理されており、民訴法二一条に基づく特別裁判籍が認められる。

(4) また本件香港訴訟については、次のとおり、香港裁判所に間接的一般管轄地を認めるべきでない特段の事情は存在しない。

イ 被告らは、訴外銀行との間に、本件起訴契約を締結した。

ロ 本件香港訴訟は、本件起訴契約に基づき、訴外銀行をして原告らに対し、訴訟を提起させたことに端を発している。

このような事情の下においては、被告らは、右訴訟に関連して、原告らから提起された反訴(第二訴訟)、及び第三当事者訴訟(第三訴訟)において、香港で応訴することによる不利益を受忍すべきである。

ハ また原告らは、日本に営業所等を有しておらず、日本において被告らに対する訴訟を提起しなければならないとするとその負担は極めて大きい。

さらに、原告らの反訴(第二訴訟)、及び第三当事者訴訟(第三訴訟)は、訴外銀行の原告らに対する訴訟(第一訴訟)と密接に関連するため、香港裁判所の同一手続で統一的な解決を図ることが裁判の適正の要請に合致し、訴訟経済にも資する。

(5) また、被告らは、本来主債務者である被告乙とその保証人である被告甲が責任を負うべき債務につき、いわれもないのに原告らに支払をさせようと企て、訴外銀行をして香港で原告らを相手方として訴訟を提起せしめたものである。

従って、被告らが本訴において、本件香港訴訟手続における原告らの反訴(第二訴訟)及び第三当事者訴訟(第三訴訟)につき、管轄権がないとの抗弁を提出すること自体、信義誠実の原則やクリーン・ハンドの原則に反し、あるいは訴訟法上の権利の濫用として許されない。

(二) 民訴法二〇〇条二号の要件(送達・応訴)

(1) 被告甲は、外国籍であるから、日本人を対象とする同条二号の適用はない。

(2) 被告乙は、日本法に基づき設立された法人であるから、同号の適用がある。しかし、被告乙は、次のとおり同号の要件を充足している。

イ① 第三訴訟について、高等法院のモーティマー判事は、一九八六年七月二日、原告らに対し、被告ら三名に対してT・P・Nを出す許可命令を発給し、T・P・N及び同許可命令は、同月二六日、日本国において、笹野哲郎弁護士に委任され、第三当事者である被告ら三名に送達された。

② 右①のような送達方法は、英米法系諸国において広く行われており、香港法上も適法である。なお、民訴法二〇〇条二号と送達条約に基づく司法共助法制とはその目的を異にし、同条二号の送達が送達条約に基づかなければならない必然性はない。

③ そこで、被告ら三名は、弁護士であるフーズナリー・アンド・ネオ法律事務所(以下「F事務所」という。)に訴訟代理を委任し、同事務所は、被告ら三名を代理して、同年八月二〇日、T・P・Nの送達確認書を提出した。

④ 被告ら三名は、同年一〇月二五日、高等法院に対し、同裁判所が第三当事者訴訟についての管轄権を有しない旨主張し、右T・P・Nの送達無効の申立をした。

⑤ 高等法院のモーティマー判事は、一九八七年一月二七日付命令をもって被告ら三名の右申立の却下決定をした。

⑥ 被告ら三名は、右却下決定に対して上訴をしなかった。

ロ また、被告乙(被告ら三名)は、第三、第四訴訟につき、次のとおり応訴し、同条二号の要件を充足している。

① 原告らは、一九八七年一月二八日、モーティマー判事から手続上の指示を受けたので、被告ら三名に対し、同年二月一〇日付訴状をもって第三訴訟を提起した。

第三当事者である被告ら三名は、その代理人弁護士であるF事務所により、第三訴訟の答弁書及び第四訴訟の反訴状を提起した。

② さらに被告ら三名は、書証を提出し、被告甲においては、書証の成立を立証するため、一九八八年二月四日付宣誓供述書を提出するなど、積極的に攻撃防御活動を行った。

③ 被告ら三名の代理人であったF事務所は、一九八八年二月に辞任した。

④ しかし、被告ら三名は、同年八月二四日までに、S事務所に、本件香港訴訟の代理を委任した。

⑤ そして、本件命令は、同法律事務所の聴問を経て発せられた。

⑥ 被告ら三名のこのような訴訟行為は、単に裁判管轄に関する異議を述べるにとどまらず、同条二号の「応訴」に該当する。なお、二号にいう「応訴」は、応訴管轄でいう「応訴」とは全く異なる。

(三) 民訴法二〇〇条三号の要件(公序良俗)

(1) 本件命令は、右(二)(2)ロ⑤のとおり、被告ら三名の代理人の聴問を経たうえでなされたものである。

また、本件費用査定書及び本件費用証明書についても、被告らの代理人であるS事務所に対し、査定期日の通知がなされ、訴外銀行及び原告らの訴訟費用計算書について意見・異議を述べる機会が与えられ、さらに香港法上各査定に対して、再査定の申立をする権利が保障されている。

このように、被告らは、本件命令、本件費用査定書及び本件費用証明書について十分に反論、異議を述べる機会を与えられており、正当手続(デュープロセス)の保障に反しないから、手続的に民訴法二〇〇条三号の公序良俗には反しない。

(2) また、前記2の本件香港訴訟に至る経緯からすれば、不要な訴訟追行の負担を負った原告らの訴訟費用のすべてを被告らに支払わせるのは条理にかない、公平の観念に合致するから、本件命令、本件費用査定書及び本件費用証明書は、内容的にも公序良俗には反しない。

(3) さらに、外国裁判所判決の内容の点については、当該判決の主文及び理由中に記載された判決の基礎となる事実について、国際的公序の見地から審査すべきであるところ、訴訟費用の負担をどのように定めるかは各国の法制の問題であり、公平の見地からより帰責性の強い当事者に費用全額を負担させることも国際的公序に照らして当然認められるべきであり、本件判決のようにインデムニティ・ベイシスによって訴訟費用の負担を命ずること自体は公序良俗に反しない。

(四) 民訴法二〇〇条四号の要件(相互保証)

香港においては、外国判決の承認に関してイギリスのコモンローの原則が行われており、コモンローの下での外国判決承認要件は、以下のとおりであり、民訴法二〇〇条各号の条件と重要な点で異らないものということができるので、我が国と香港との間には相互の保証が存在する。

(1) 確定金額を内容とする金銭判決であること

(2) 判決が確定していること

(3) 裁判管轄権を有すること

(4) 抗弁事由のないこと

(5) 執行を求めるには訴訟手続によること

9 結論

よって、原告らは、被告らに対し、本件外国裁判所判決に基づく執行判決を求める。

二 被告ら(請求原因に対する認否)

1 請求原因1の各事実は認める。

2 同2の各事実のうち、原告らと訴外銀行との本件保証契約が解除されたことは否認し、その余は認める。

3 同3の各事実は認める。

4(一) 同4の(一)ないし(三)の各事実は認める。

(二) 同4の(四)の事実のうち、本件命令が被告らの代理人の聴問をした上で出されたことは否認し、その余は認める。

(三) 同4(五)ないし(七)の各事実は認める。

5 同5の各事実は認める。

6 同6、7の各事実は否認する。

7(一) 同8(一)(1)ないし(3)の各事実は否認する。

(二) 同8(一)(4)イの事実は認めるが、ロ、ハの各事実は否認する。

(三) 同8(一)(5)の事実は否認する。

(四)(1) 外国裁判所による判決等が日本において承認・執行されるためには、「法令又ハ条約ニ於テ外国裁判所ノ裁判権ヲ否認セサルコト」が要求される。

これは我が国の国際民事訴訟法からみて、当該訴訟事件に関し外国裁判所が裁判管轄を有しない場合は、我が国の裁判所は、当該外国判決を承認し得ないという趣旨である。

(2) 従って、当該外国裁判所に提起された訴訟事件について、当該外国裁判所において、自国に管轄権が存すると判断して実体判決等をしたとしても、我が国の民事訴訟法の見地により当該外国に管轄権が存しないと判断すれば、当該外国判決等は承認されない。

(3) そして、被告らは、本件香港訴訟提起の時点において香港に住居所を有しておらず、事業活動も行なっていなかったのであるから、香港裁判所は、本件香港訴訟について、間接的一般管轄権を有していなかった。

8(一) 請求原因8(二)(1)は争う。

(二)(1) 同8(二)(2)イの事実は否認する。

(2) 被告ら三名は、一九八六年七月二五日、原告ら代理人事務所勤務の弁護士からT・P・Nを事実上受領した。

しかし、これは我が国とイギリスとの間の送達条約に違反するものである。

従って、本件においては、民訴法二〇〇条二号の要件を充足していない。

(三)(1) 請求原因8(二)(2)ロの事実は否認する。

(2) 第三訴訟提起後に、被告ら三名は、香港のF事務所に本件香港訴訟の代理を委任していたが、フーズナリー弁護士は、一九八七年一二月二日付の手紙で、訴外銀行の原告甲に対する請求は認容される見込みであって、これ以上訴訟費用の増大を招くことは負担が重くなるという理由で、被告甲が自ら法廷に出頭して訴訟を追行するように勧めた。

そこで、被告甲は、同弁護士に対し、右勧告に従うと回答したため、同弁護士は、一九八八年二月二五日、裁判所の許可を受けて訴訟代理人を辞任した。

本件命令には、被告らの代理人の聴問を行なった旨記載されているけれども、同弁護士は、同命令前に辞任しているので、同年八月二五日に法廷に出頭するはずがなく、右記載は誤りである。

高等法院は、被告ら(代理人を含む。)不出頭のまま一方的に審理を行なって本件命令をしたものであり、民訴法二〇〇条二号の要件を充足していない。

9(一) 請求原因8(三)の各事実は否認する。

(二) 高等法院は、被告ら(代理人を含む。)不出頭のまま、一方的審問手続によって審理し、本件命令を出したのであり、このような本件命令は、法の適正手続(デュープロセス)に違反するものであり、公の秩序に違反するものとして民訴法二〇〇条三号の要件を充足しない。

(三)(1) 他方、被告乙が訴外銀行から借入れた借入金は、同被告の我が国における事業のみならず、原告らや他の兄弟の海外での事業のために使用されたものであり、原告らも被告乙の訴外銀行からの借入金債務につき共同保証人となっていたのであるから、原告らも保証人として応分の債務負担をすべきであると被告らは考えた。

(2) そこで、被告らは、訴外銀行と交渉を重ね、約二年を経て本件起訴契約の合意に達した。

(3) そして、本件香港訴訟(第一訴訟)は、本件起訴契約に基づき提起されたものであるが、同訴訟(第一訴訟)における主たる争点は、右合意が日本国民法第一条に照らして、公序良俗に反して無効とされるべきか否かということであった。

本件判決において、高等法院は、右争点に対し、日本の裁判所には同条の原則を広く適用する裁量権が与えられていると誤解して、日本の裁判所へ提訴された場合には前記合意が無効とされるとの解釈を前提として右合意を無効と判示した。

(4) そうすると、高等法院は、訴外銀行と被告らとの間に不法ないし非倫理的共謀行為があったとの心証を有していたことがうかがえ、訴訟費用額の決定(本件命令)においても、極めて不公平な被告らに対する誤った印象に基づき、懲罰的費用額を定めたものと推測できる。

(5) そうであれば、かかる不当な懲罰的決定である本件命令は、我が国の公序良俗に反するものとして、民訴法二〇〇条三号の要件を充足していない。

10(一) 請求原因8(四)の事実は否認する。

(二)(1) 一九九七年には香港は中国に返還され、一〇〇年以上にわたるイギリスの植民地支配が終了する。

中国政府は、返還後五〇年間は、香港の特殊性を尊重する旨表明しているが、将来については予想することができず、現在の中国本土における裁判所の判決が日本人在住者に対してなされた場合、我が国の裁判所において、民訴法二〇〇条所定の外国判決としてのすべての要件を充足しているとは認められないと思われる。

(2) また、イギリスとの関係においても、我が国の裁判所が同条の外国判決として保護し、かつ尊重するために、イギリス政府も外国判決(相互執行)法の対象国のリストに挙げられていない日本をドイツ、フランスと同様、追加すればすむことである。

旧イギリス連邦諸国のほかにも、ベルギー、フランス、ドイツ、オーストラリア、オランダ、スイス、イスラエルの各国の裁判所の判決は、香港において、我が国の民訴法二〇〇条、民事執行法二四条の執行判決とほぼ同等の有利な取扱いが認められているのである。

(3) 従って、抽象的にコモンロー裁判所においても、外国判決には一定の配慮をしているという程度の理解で、しかも未だ我が国の裁判所の判決について、相互保証を認めた実例が一件も報告されていない現時点において、イギリス本国の裁判所の判決についても問題が存するのに、まして香港裁判所の判決について相互保証の存在を認めることは、実際的相違の十分な分析がなされていない以上、時期尚早であって、我が国の国益の見地からも是認することはできない。

(4) さらに、香港外国判決(相互執行)法に基づく外国判決の取扱いとコモンロー上の外国判決の取扱いとの間には、香港の裁判所においても格段の相違がみられるのである。

すなわち、コモンロー裁判所の外国判決の取扱いにおいては、多くの抗弁が慎重に取上げられるのであり、通常二年間の審理期間が必要であるとされており、我が国の民訴法二〇〇条、民事執行法二四条の執行判決とは手続上大きな相違がある。

(5) 結局、相互保証の見地からみれば、香港外国判決(相互執行)法の対象国のリストに日本がのせられるまでは、相互保証の存在を否定することが必要である。

11 よって、原告らの本訴請求は失当である。

第三 証拠〈省略〉

理由

一当事者、本件香港訴訟に至る経緯、本件香港訴訟の経緯、本件外国裁判所判決の成立および確定について

1  請求原因1(当事者)の各事実は、当事者間に争いがない。

2  同2(本件香港訴訟に至る経緯)の各事実のうち、原告らと訴外銀行との本件保証契約が解除されたことは、〈書証番号略〉により認めることができ、その余の事実については当事者間に争いがない。

3  同3(本件香港訴訟の経緯)の各事実は、当事者間に争いがない。

4  同4(本件外国裁判所判決の成立及び確定)の(一)ないし(三)の各事実、及び(四)のうち、本件命令が被告らの代理人の聴問をした上で出されたことを除くその余の事実は、当事者間に争いがない。

二本件命令の意味及び被告らが原告らに対して、支払うべき費用の範囲について

1  請求原因5の各事実は、当事者間に争いがない。

2  右1の認定事実によれば、本件命令及びこれと一体をなす本件費用査定書と本件費用証明書(本件外国裁判所判決)に基づき、被告らは、原告らに対し、120万2585.58香港ドルの支払義務を負うことが明らかである。

三本件命令の遅延利息について

1(一)  〈書証番号略〉によれば、請求原因6(一)の事実及び金銭債務の遅延利息が裁判(命令)の日から起算されることが認められ、また、〈書証番号略〉によれば、右遅延利息の利率が、別紙利息計算表記載のとおりであることが認められる。

(二)  そして、〈書証番号略〉によれば、本件外国裁判所判決(本件命令、本件費用査定書、本件費用証明書)には高等法院の個別の命令が記載されていないことが明らかである。

2 前記二2の認定事実と右1の認定事実を併せ考えると、香港最高法院首席裁判官命令で定められる利率により計算した元金120万2585.58香港ドルに対する一九八八年九月一日以降の遅延利息が別紙利息計算表記載のとおりとなることが明らかである。

3  ところで、外国判決の承認とは、当該外国判決が判決国で法津上有する効力をそのまま承認するものであると解するのが相当である。

そこで、判決国の民事訴訟制度において、金銭給付判決の附随的給付義務については主文の記載事項とせず、法令によって自働的かつ一義的に確定し、かつ執行力を付与するようなシステムを採用している場合には、当然その効力も承認の対象になるものと解するのが相当である。

4  そうすると、右1、2の認定事実に照らし、本件命令の主文には遅延利息の給付義務が記載されていないけれども、これも承認の対象に包含されるといわなければならない。

5  従って、被告らは、原告らに対し、本件命令(本件外国裁判所判決)に従い、120万2585.58香港ドルに対する右2認定の遅延利息の支払義務を負うことが明らかである。

四本件命令の外国確定判決該当性について

1 民事執行法二四条、民訴法二〇〇条に規定する外国裁判所の「確定判決」とは、外国裁判所がその形式・名称の如何を問わず、実体私法上の法律関係につき、当事者双方の手続保障のもと、終局的にした裁判で、通常の不服申立の方法では不服を申立てることができなくなったものを指称し、外国裁判所の決定、命令であっても、右性質を有するものであれば、右確定判決に含まれると解するのが相当である。

2  そして、本件命令は、前記一4認定のとおり、訴訟費用に関して、原告ら及び被告らの手続保障のもと(この点については後記五2(五)、3(二)、(三)判示のとおり)、終局的になされた裁判(命令)であり、前記一4認定のとおり、本件命令及びこれと一体をなす本件費用査定書と本件費用証明書(併せて本件外国裁判所判決)が上訴なくして確定したことが明らかであるから、これらは、外国裁判所の「確定判決」にあたるというべきである。

五本件命令等(本件外国裁判所判決)の民訴法二〇〇条の要件充足性

民事執行法二四条三項は、外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、外国裁判所の判決が、民訴法二〇〇条各号に掲げる条件を具備しないときは、却下しなければならないと規定している。

そこで、以下、同条所定の各号要件の具備について検討する。

1  民訴法二〇〇条一号(外国裁判所の裁判権)について

(一)(1)  同条一号は、「法令又ハ条約ニ於テ外国裁判所ノ裁判権ヲ否認セサルコト」と規定しているところ、同号の趣旨は、当該外国裁判所が我が国の国際民訴法の原則からみて、その事件につき国際裁判管轄権を有する、すなわち、間接的一般管轄権を有すると積極的に認められることを要求するにあると解するのが相当である。

(2) ところで、国際民事紛争について、当事者が我が国の裁判所に提訴したとき、我が国の裁判所が管轄権を有するかどうかという問題、すなわち、直接的一般管轄権の存否の判断と右間接的一般管轄権の存否の判断とは、表裏一体の関係にあり、本来、同一の法則によって規律されるべきところ、我が国には、国際裁判管轄を直接規定する法規もなく、よるべき条約、一般的に承認された明確な国際法上の原則も確定していない。

そこで、このような現状のもとにおいては、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により、条理にしたがって決定するのが相当である。

(3) 従って、わが民訴法の国内の土地管轄に関する規定、たとえば、被告の住所・居所(民訴法二条)、法人その他の団体の事務所又は営業所(同法四条)、義務履行地(同法五条)、被告の財産所在地(同法八条)、併合請求の裁判籍(同法二一条)、その他民訴法の規定する裁判籍のいずれかが判決国たる香港にあると認められるときは、これらに関する訴訟事件につき、判決国たる香港に裁判権を認めるのが右条理に適い間接的一般管轄を肯定できるものと解するのが相当というべきである。

(二) 前記一、二の認定事実によれば、本件命令等は、本案判決たる本件判決の訴訟費用の負担に関する附随的裁判であることが明らかであるから、本件命令の裁判権の存在については本案判決たる本件判決について論ずべきこととなる。

(三) そして、前記一3の認定事実によれば、本件香港訴訟のうち、第一訴訟の訴訟物は、訴外銀行の原告らに対する保証債務履行請求であり、第二訴訟の訴訟物は、原告らが訴外銀行に右保証債務の履行をすることを条件として、被告甲及び訴外ラディカが訴外銀行のために設定した根抵当権につき訴外銀行に代位する旨の確認であり、第三訴訟の訴訟物は、原告らが訴外銀行に対し、右保証債務を負うものとされた場合には、原告らが被告ら三名に対し、求償権を有する旨の確認であり、第四訴訟の訴訟物は、被告ら三名が原告らに対して、訴外銀行に対する支払責任は原告甲にあるとの確認であることがそれぞれ明らかである。

(四)  原告らの住所が、第一訴訟の提起時、香港にあったことは当事者間に争いがない。

そうすると、第一訴訟については、その被告である原告らの住所地である香港裁判所に訴提起がなされているのであり、前記(一)の(2)、(3)判示の法理に照らし、香港裁判所は、第一訴訟につき、間接的国際裁判管轄権を有するものということができる。

(五)(1)  次に第二訴訟は、原告らの、訴外銀行、被告甲及び訴外ラディカに対する反訴(カウンタークレイム)であるが、被告甲及び訴外ラディカに対する訴えは、従前の当事者に対するものではなく、第三者に対するものである。

(2) しかしながら、訴外銀行が原告らに提起した第一訴訟は、前記一2(本件香港訴訟に至る経緯)で認定したとおり、訴外銀行と被告らとの本件起訴契約に基づくものであり、被告らが訴外銀行に委託して提起させたものであるという本件香港訴訟の背景事情を考慮すれば、第一訴訟に右第二訴訟を併合して審理しても必ずしも被告らの不利益になるというわけではなく、右第二訴訟について、第一訴訟との間にわが国の民訴法二一条の併合管轄を認めても、前記(一)の(2)、(3)の法理に照らし、必ずしも条理に反するものではない。

(3) したがって、第二訴訟についても、香港裁判所は、間接的国際裁判管轄権を有するものということができる。

(六)(1)  次に、第三訴訟は、原告らの被告ら三名に対する保証債務の履行に基づく求償請求権の存在確認請求である。

(2) 本件においては、本件保証契約に基づく求償請求権の義務履行地の合意はなく、本件保証契約の効力についての準拠法に関する明示の合意もない。

しかし、前記一1、2の認定事実、〈書証番号略〉及び弁論の全趣旨によれば、本件保証契約は、訴外銀行の日本における大阪支社の営業活動として、同じく日本に本店(営業拠点)を有する被告乙に対して貸し付けた融資債権を担保するものであり、訴外銀行の日本における大阪支社の営業活動であること、本件保証契約は、その締結に至る過程において、共同保証人の一人であり、かつ日本に住居を有する被告甲が、他の共同保証人である原告ら及びラディカを代表して交渉にあたり、本件保証契約が締結されるに至ったことが認められる。

右事実によれば、本件保証契約の当事者は、本件保証契約の最も密接かつ実質的な関連性を有する日本国法を準拠法とする意思を有していたものと推定することができ、従って本件保証契約の効力の準拠法を日本国法とする黙示の合意があったものと解するのが相当である。

仮に、右黙示的合意が認められないとしても、右認定事実によれば、本件保証契約は、日本国において締結されたものと解せられるので、法令七条二項の行為地たる日本国の法律がその準拠法になると解すべきである。

そして、保証債務の履行に基づく求償請求権の義務履行地は、わが国民法四八四条後段によれば、求償請求権の債権者である原告らの住所地、すなわち香港であり、また、右(五)において説示したような本件香港訴訟に至る経緯に照らせば、わが国民訴法五条により義務履行地である香港に土地管轄を認めても、前記(一)の(2)、(3)の法理に照らし、必ずしも条理に反するものではない。

(3) したがって、第三訴訟についても、香港裁判所は、間接的国際裁判管轄権を有するものということができる。

(七)  第四訴訟は、被告ら三名の原告らに対する訴外銀行に対する支払い責任は原告甲にあるとの債務存在確認請求であり、第三訴訟に対する反訴の性格を有するものであり、したがって、本訴の手続内で併合審理されるのであるから第四訴訟についても、香港裁判所は、間接的国際裁判管轄権を有するものということができる。

(八)  以上から、香港裁判所は、第一訴訟ないし第四訴訟すべてについて間接的国際裁判管轄権を有していたものというべく、したがってその付随的裁判たる本件命令等についても同裁判所は裁判管轄権を有していたものといえる。

よって、本件命令は、民訴法二〇〇条一号の要件を充足しているものといわなければならない。

2  同条二号(送達・応訴)について

(一) 本号は、被告として防御の機会を与えられないで敗訴した日本人を保護する規定であるところ、前記一1の認定事実によれば、被告甲はインド国籍を有し、日本人ではないから本号の要件を検討する必要はないが(同被告の送達については、次の三号において検討する。)、被告乙は日本法に基づいて設立された法人であり、本号にいわゆる「日本人」から、法人を除外する理由はないから、以下被告乙について、本号の要件の充足の有無を検討する。

(二)  ところで、本号の趣旨が被告として防御の機会を与えられないで敗訴した日本人を保護するところにあること、及び「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約」第一〇条(a)の趣旨からすれば、送達の適法性に関しては、現実に起訴及びその内容を了知でき、防御できるような送達方法で呼び出しを受ければ足り、必ずしも同条約に基づく国際司法共助手続による送達を必要としないと解するのが相当である。

(三)  また、前記1(二)において認定したとおり、本件命令等は、本案判決たる本件判決の訴訟費用に関する付随的裁判であるから、本件命令等について本号の要件を検討するには、その基礎となっている本案判決をも含めて検討する必要がある。

(四)  (本案判決について)

〈書証番号略〉及び弁論の全趣旨によれば、請求原因8(二)(2)イ①(被告ら三名に対するT・P・Nの送達)、③(被告ら三名からのT・P・Nの送達確認書の提出)、④ないし⑥(被告ら三名からの送達無効申立とその却下決定、右却下決定に対して被告ら三名が上訴しなかったこと)の各事実を認めることができ、右認定事実によれば、第三訴訟の被告である本件被告乙について、民訴法二〇〇条二号の要件は充足しているものといえる。

(五)  (本件命令等について)

〈書証番号略〉、鑑定人谷口安平の鑑定の結果(以下「本件鑑定」という。)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(1) 原告らは、一九八八年五月、本件判決中の命令の変更を求める申立をしたが、その際、第三当事者訴訟の当事者である被告ら三名に訴訟代理人がいなかったので、チャン香港最高法院主事から、被告ら三名を代理し、管轄外の第三当事者(サードパーティ)に対して、ノーティス・オブ・モーションを送達する許可を得て、同年七月二六日、内藤正明弁護士により、その副本が日本国に居住・所在する被告らに対し、適法に交付送達された。

(2) そこで、被告ら三名は、右モーションについての事件処理を香港のS事務所に依頼し、同事務所は、同年八月二三日、右ノーティス・オブ・モーションに関して、行われる審理において、同事務所が第三当事者(サードパーティ)である被告ら三名を代理するよう指示を受けた旨を原告らの本件香港訴訟における訴訟代理人に通知した。

(3) S事務所がサード・パーティである被告ら三名を代理することは、正式には同月二四日に記録され、同事務所は、サードパーティ(被告ら三名)を代理する弁護士として任命された旨を記載したノーティスを高等法院に提出した。

(4) そして、S事務所の指示に基づき、クマール・ラマナサン弁護士が被告らの代理人に選任され、右ノーティス・オブ・モーションの審理が同月二五日に、右弁護士の関与の下に行われた。

(5) そして、ナザレス判事は同月三一日、本件命令をした。

(6) そして、右認定事実に後記3(三)認定の事実をあわせ考慮すると、本件命令等についても、被告乙に関して民訴法二〇〇条二号の要件を充足しているといわざるを得ない。

3  同条三号(公序良俗に反しないこと)について

(一)  本号は、「外国裁判所ノ判決カ日本ニ於ケル公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反セサルコト」と規定するところ、同号は外国裁判所の判決内容がわが国の公序良俗に反しないことのほかその成立手続についてもわが国の公序良俗に反しないことを要求している趣旨と解するのが相当である。(最高裁判所昭和五八年六月七日第三小法廷判決、民集三七巻五号六一一頁参照)。

(二)(1)  前記2(四)の認定事実によれば、第三訴訟の被告である本件被告甲は、第三訴訟(第三当事者訴訟)について、適法な送達を受けたものと認めることができ、送達に関する手続違反はないというべきである。

(2) 請求原因5(本件命令等の意味及び被告らが原告らに対して支払うべき費用の範囲)の各事実は、当事者間に争いがない。

(三)  (成立手続について)

(1) 前記2(五)において認定したとおり、本件命令等は被告ら訴訟代理人の聴問手続を経て発せられており、被告らに対する適正手続の保障に欠けるところはない。

(2) そして、前記一4(本件外国裁判所判決の成立及び確定)の認定事実と〈書証番号略〉及び弁論の全趣旨によれば、本件命令に基づく訴訟費用査定手続に関しても、被告らの訴訟代理人であるS事務所の弁護士に対し、査定期日等の通知がなされており、同事務所の弁護士は現実には出頭していないが、高等法院に正式に記録された被告らの代理人に対してなされているのであるから、本件費用査定書の成立過程においても被告らに対する聴問の機会は与えられており、適正手続の保障に欠けるところはないというべきである。

(四)  (内容について)

〈書証番号略〉及び本件鑑定によれば、以下の事実を認めることができる。

(1) 香港における訴訟費用の査定手続(タクセーション)には、通常の査定基準であるパーティー・アンド・パーティー・ベイシスのほかに、ある特殊な場合にはインデムニティ・ベイシスという基準が適用され、前者は、当事者がソリシタ(事務弁護士)への報酬も含めて実際に費やした費用の約六〇パーセントくらいしか通常は回収できないが、後者はその全額を回収できる基準である。

(2) 本件命令(〈書証番号略〉)は、原告らが被告ら三名に対し、インデムニティ・ベイシスの基準によって、審理の費用のうち、半日分を除き第三当事者手続を含む本件香港訴訟において、原告らの負担する費用全額について回収できる旨命令し、本件費用査定書(〈書証番号略〉)は、右命令に従い、インデムニティ・ベイシスの基準によって右費用を98万8777.81ドルと査定した。

(3) ところで、訴訟の費用の負担についてどのように定めるかは、各国の法制度の問題であるが、当事者が実際に負担した費用以上に賠償を命じるのであれば格別、その実際に負担した範囲内の費用であれば、その全額をより帰責性の強い者に負担させても、それ自体公平の理念に照らし是認することができ、公序良俗に反するとはいえないと解すべきである。

(4) そこで検討するに、本件命令の内容が公序良俗に反するかどうかの判断においては、その結論のみならず、結論にいたる理由についても、結論に至る過程を知るかぎりにおいて考慮すべきであると解するのが相当であるところ、〈書証番号略〉(本件判決)、本件鑑定及び弁論の全趣旨に照らせば、本件命令が右(2)のように、インデムニティ・ベイシスの基準によったのは、前記一2(本件香港訴訟に至る経緯)において認定した被告らの不誠実な側面を考慮しているものと推認でき、他に右推認を覆すに足りる証拠はない。

(5) そうであれば、本件命令がそのような不誠実な被告らに対し、インデムニティ・ベイシスの基準によったとしてもそれ自体公平の理念に照らして、是認することができ、本件命令はその内容面でも公序良俗に違反するものとはいえないというべきである。

(6) 従って、本件命令の内容を具体化した本件費用査定書と本件費用証明書もその内容面において公序良俗に違反するものとはいえないというべきである。

(7) よって、本件命令等は、民訴法二〇〇条三号の要件を充足しているものといわなければならない。

4  同条四号(相互保証)について

(一)  本号は、承認国であるわが国と判決(裁判)国との間に「相互ノ保証アルコト」を要求しているところ、「相互ノ保証アルコト」とは、当該判決(裁判)をした外国裁判所の属する国において、わが国の裁判所がした判決(裁判)と同種類の判決(裁判)が民訴法二〇〇条各号所定の条件と重要な点で異ならない条件のもとに効力を有するものとされていることをいうと解するのが相当である(最高裁判所昭和五八年六月七日第三小法廷判決、民集三七巻五号六一一頁参照)。

(二)  そこで本件について検討するに、〈書証番号略〉及び本件鑑定によれば、香港には外国判決の取扱に関する制定法として「外国判決(相互執行)法」が成立しており、同法三条には、香港総督は、ある国と香港との間に実質的な相互の保証があると認めるときには、その国に同法を適用することを規則をもって命じることができる旨規定されており、右規定に基づき制定された「外国判決(相互執行)規則」には、総督が香港との間に判決の取扱に関して相互の保証があると認める外国が列挙されているところ、わが国は右相互の保証がある外国には挙げられていないことが認められる。

(三)  ところで、〈書証番号略〉及び本件鑑定によれば、以下の事実が認められる。

(1) (香港法の体系)

① 香港は、一八九三年の租借に基づいて成立したイギリスの属領であるが、一九一七年の開封特許状などにより制限的にではあるが、立法権を有する総督によって統治され、独自の裁判制度も有しているので、独立の法域を有すると認められる。

② 香港は、イギリスの植民地政策によって、原則としてイングランド法(議会制定法を含む)が導入され、一般的には、イングランドとウェールズのコモンロー及びエクィティ準則は、香港に適用可能であり、かつ香港に適用されうるイギリス議会の立法または枢密院令によりなされる修正がないかぎり有効であると規定されている。

③ したがって、香港の法体系を検討する場合には、香港に適用のあるイギリス制定法、香港の制定法、コモンローの三種類の法源に配慮することが必要である。

(2) (香港における外国判決承認法の体系)

① 香港における外国判決承認法の体系については、右の香港法の体系について述べたことが妥当するところ、香港に適用のあるイギリス制定法は存在しない。しかし、イギリスの一九三三年外国判決承認(相互執行)法は香港に継受され、香港の制定法として外国判決承認(相互執行)法が成立しており、その適用対象とされる外国の範囲は、香港総督の命令によって列挙されており、その中にわが国が挙げられていないことは、前記(二)において認定したとおりである。

② 他方、前記香港の体系において認定したように、イギリスのコモンローの準則は、制定法による修正がなされないかぎり、香港においても有効とされている。したがって、わが国と香港との間の外国判決承認に関する相互の保証の有無は、コモンローの諸原則に照らして判断されるべきこととなる。

(3) (コモンローにおける外国判決承認の要件)

そこで、コモンローの下では、いかなる要件の下で、外国判決を承認することができるかであるが、コモンロー上、外国判決承認については以下の要件が必要とされている。

① 外国判決が確定金額を内容とする金銭判決であること

ここにいう金銭判決には、訴訟費用の判決(裁判)も含まれる。

② 外国判決が確定していること

判決の確定とは、判決が既判力を有し、取消・変更の可能性がなくなったことを指す。

③ 外国裁判所が裁判管轄権を有すること

外国裁判所が裁判管轄権を有するかどうかについては、間接的裁判管轄権の決定を承認国の立場から行うものとされている。そして、その決定基準は被告の居住地ないし所在地とされており、応訴管轄、合意管轄など被告保護を中心としてその要件が捉えられている。

④ 外国判決が不当なものでないこと

判決を不当なものとする抗弁事由として、詐欺、公序違反、手続が自然的正義に反することがあげられている。

⑤ 執行を求めるにはコモンロー上の訴え(訴訟手続)によること

コモンローでは、被告から右④の抗弁事由の主張がないか、あっても裁判所の許可が与えられなければ、略式判決によることが認められている。

(四)  (承認条件の比較)

そこで、以上の認定事実のもと、コモンロー上の外国判決承認の右各要件が前記(一)の法理に照らし、わが国との間で相互の保証があると認められる程度のものであるかどうかについて、以下検討する。

(1) (確定金額を内容とする金銭判決であること)

ここにいう金銭判決には、訴訟費用の判決(裁判)も含まれるから、わが国の承認条件と異ならない。

(2) (外国判決の確定)

判決の確定とは、判決が既判力を有し、取消・変更の可能性がなくなったことを指し、わが国と承認条件は異ならない。

(3) (裁判管轄権)

間接的裁判管轄権の決定を承認国の立場から行う点でわが国と同様であり、その決定基準もわが国では被告の住所地を原則とするとされているのに対し、コモンローでは被告の居住地ないし所在地とされており、差異がないとはいえないが、応訴管轄、合意管轄など被告保護を中心としてその要件が捉えられているので、わが国と重要な点で異ならないということができる。

(4) (判決の不当性)

判決を不当なものとする抗弁事由として、詐欺、公序違反、成立手続が自然的正義に反することがあげられている。そこで、前記3(一)において説示したとおり、わが国の民訴法二〇〇条三号の公序良俗違反が、外国判決の内容のみならず、その成立手続についても公序良俗に反しないことを条件としていること、詐欺の要件については公序良俗違反と実質的に同視できることなどからすれば、この点についてもわが国の承認条件と実質的には異ならないということができる。

(5) (訴訟手続)

コモンローでは、被告から抗弁事由の主張がないか、あっても裁判所の許可が与えられなければ略式判決によることも認められており、この略式訴訟手続の存在により、コモンロー上の訴訟手続といっても大幅に形式化されていて、わが国における執行判決手続に比して、過重な負担を要求するものではないことから考察すれば、実質的にわが国の手続的要件と重要な点において異なるものではないと解するのが相当である。

利息計算表

期間(年月日)

日数

利率(年)

金額(香港ドル)

1988.9.1

1988.10.31

61日

6.125%

12,310.02

1988.11.1

1989.4.30

181日

8.125%

48,453.49

1989.5.1

1989.10.31

184日

10%

60,623.50

1989.11.1

1990.4.30

181日

10.8%

64,405.87

1990.5.1

1990.10.31

184日

10%

60,623.49

1990.11.1

1991.1.31

92日

10.86%

32,918.55

1991.2.1

1991.2.28

28日

13.11%

12,094.38

1991.3.1

1991.3.31

31日

12.94%

13,216.58

1991.4.1

1991.6.30

91日

12.5%

37,477.83

1991.7.1

1991.8.31

62日

12.66%

25,861.19

1991.9.1

1991.10.31

61日

12.5%

25,122.50

1991.11.1

1991.11.30

30日

12.25%

12,108.22

1991.12.1

1991.12.31

31日

12%

12,256.48

1992.1.1

1992.3.31

91日

11.28%

33,820.00

1992.4.1

1992.6.30

91日

11.5%

34,479.61

1992.7.1

1992.9.30

92日

11.27%

34,161.33

1992.10.1

1992.12.31

92日

9.69%

29,372.08

小計

549,305.12

及び1,202,585.58香港ドルに対する1993年1月1日から支払済みまで年9.5%の利率による金員。但し,香港最高法院令第四章に基づき首席裁判官による利率の変更があった場合はその利率による。

(6) (結論)

以上認定説示したところから明らかなように、香港において、外国判決の承認に関しては、イギリスのコモンローの原則が行われており、コモンローの下での外国判決の承認要件は、わが国の承認要件と重要な点で異ならないものということができ、よって、わが国と香港との間には相互の保証があるものと認めるのが相当である。

右認定に反する被告の主張は採用できない。

(五)  従って、本件命令等(本件外国裁判所判決)は、民訴法二〇〇条四号の要件を充足しているということができる。

(六)  なお、被告らは、近くイギリスの香港植民地支配が終了することを前提として、相互保証の要件が欠ける旨主張するけれども、未だ香港の中国返還がなされていない以上、被告らの右主張はその前提を欠き、失当である。

(七)  また、被告らは、イギリスないし香港の裁判所において、コモンロー上の外国判決の執行承認を認容する判決の実例が全くないから、現時点において、相互保証の存在を認めるのは時期尚早である旨主張するけれども、香港と我が国の外国判決執行承認の法制に鑑みて前示のように相互保証の存在が認められる以上、その実例の存在の有無は右認定を何ら左右するものではないというべきであり、被告らの右主張は失当である。

(八)  さらに、被告らは、香港の裁判所がコモンロー上の訴として審理する場合には、通常二年間の審理を必要とし、民事執行法二四条に基づく我が国の執行判決と手続上大きな相違がみられるから相互保証の存在を否定すべきである旨主張し、〈書証番号略〉にはこれに符合する部分がみられる。

しかし、コモンロー上の訴についても、前示のように略式訴訟手続も用意されており、かつコモンロー上の訴訟手続の審理期間の長短は、事実問題にすぎないから、両国の法制の比較の問題である相互保証の存否の問題とは無関係であるので、被告らの右主張は失当である。

六結論

以上の次第であって、前記一1認定のとおり、被告らの普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所は当裁判所であり、前記四、五判示のとおり、本件命令等(本件外国裁判所判決)は確定し、かつ民訴法二〇〇条各号に掲げる条件を具備しているので、民事執行法二四条及び民訴法八九条、九三条一項本文、一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官辰巳和男 裁判官石井浩 裁判官山田整)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例